2017年05月16日

二つの古都、走る路面電車

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 あら早いわね、藤沢行きがもう来たわ。

ちょっと戸惑って、ああ、なんだ。よくみれば、いつもの北野白梅町ゆきの嵐電北野線でした。

してやられた、と少しくちびる噛んだのですが、こうして色とりどり、さまざまな装いの見られる嵐電は楽しいものですね。

 薄いか濃いかでいえば、深いむらさきいろした一両編成。これが嵐電のトレードマークですが、濃いみどりにベージュの帯して走る電車はどこか見覚えがあるけれど、ここではない。きっかけは、どちらも"古都"を走る路電どうし、といったところでしょうか。東と西でずいぶん離れた、江ノ電と嵐電ですが、いちおう二人は姉妹ということなのだそうです。


 本当の姉妹ではないけれど、遠く離れて、といって連想の糸をつないでゆくと、鎌倉を舞台にした小説「山の音」を書いたのは川端康成でしたが、川端さんの作品に「虹いくたび」という作品があったのを思い出します。主人公と言ってしまうと語弊がありますが、作品をつくるのは若い三姉妹。しかし、実は三人とも父親は同じで母親がそれぞれ違う、いわゆる腹違いのきょうだいなのです。そして、わけあって末の若子だけは京都で生まれ育ち、自分の知らない妹がいることをそれとなく感じた二女の麻子が、東京からはるばる京都へと妹を探しにくる、というところから始まるお話だったと思います。

 もちろん永く歴史の舞台とされた京都の街は、何かと作品のモチーフにされがちなものですが、ただ観光の名所を並べただけで通っているそれらとは違って、川端さんのじっくりとした観察の眼、そして流麗かつ簡潔な筆づかいによって、京都の風物がありのままに、そして全体に効果を与えるようにきれいに切りとられていたように思います。


 川端さんと呼んでいるのは余りになれなれしいようですが、川端さんのほかの作品である、京北の北山杉の里を舞台にした「古都」へと読書の散歩みちをのばしてみても面白そうです。ただ、こんな折ですから、何度も読みかえしてセリフの逐一までおぼろげながら覚えてしまった「虹いくたび」を、またはじめからページを繰ってみたいと思うのです。


2017/5/7
posted by Y.Toriyama at 15:39| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記
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