2017年11月18日

ゆきどまりの駅に立って、思うこと

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 かつて都会の海水浴場だった川崎区の扇町は、その跡もなく工場地帯に生まれ変わったが、思い出話にしばしば“鶴見の扇町”といわれることがある。
 地図の上では、かつて一度もお隣、鶴見区のものになったことはないのだけれど、多摩川の向こうから夏の娯楽をもとめてやってきた人たちには、“鶴見の扇町”なのであろう。というのも、東京・新橋、品川過ぎて、川崎駅の次、鶴見で乗り換える。海の見える町をゆく鶴見線の、海水浴客で満載のにぎやかさが、心に残っているからではなかろうか。
 各地を旅していると、実際の地名とその外にいる人が思い描く場所と名前がすこし違っていることが度々ある。旅人にとって町への入り口はいつも線路であり最寄り駅である。そのまた昔ならば、街道であり、そこから横道の分かれる宿場町である。先のような“間違い”は、それを正すとかそのままでいいとかいう話ではなくて、こういうあいまいさが、人と土地との関わりかたの本当を言っているのだと思う。
 あてもなしに行きどまりの駅へ行って、レールの果てを眺めていると、他愛なくこんなことを思ったりするのである。

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2017年11月11日

古いノート・ブックより

 東西に走るながい長い列車に乗り、沼津そして東京を目指している。浜松を出たあたりからの単調な景色に輪をかけるように、富士山の見える手前で日が暮れて、てもちぶさたにうつらうつらとまどろみかけていた。夕闇がさきか、雨雲がさきか、列車は東に向かうにつれて、窓のガラスを斜めのしずくが伝うようになっていた。

 ふと目覚めたところが近くに学校のある駅らしく、ホームに電車が入るなり、にぎやかな声の様々が流れとなって電車を包みこんだ。ドアが開けば色とりどりの傘を閉じたセーラー服の学生たちで、再び列車が走り出すと、杖代わりに床についた雨傘の穂先から細い川がいくつも流れて、外の雨降りを思わせた。

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2017年11月05日

陽暮れかかる、旅のみそら

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 堰きとめられた静かな水面が、鏡のように向こう岸の紅葉を映している。背の高い山に囲まれた盆地にありがちで、ここの山里の夕暮れも早い。ちょうど私はなだらかな河の南岸に立っていることになるのであって、私の来た道はもう薄暗かった。だから、土手に伸びる道の向こうにまだあかあかと照らされた樹々の赤色を見たときには、寒さではなくその明るさに心震えた。

 河北のあたりはおそらく田んぼのような低い土地が続いていて、どこかで急に背高い山につながっている。色を変えない木も多いらしく、夕暮れて来るまではその山肌の美しさに気がつかなかったのであるが、沈みかけの陽に誇張されてだろうか、いちめん真っ赤に染めた秋の山がそのまま眼に映るのも美しく、さらに静かな川面に映りこんだ。ときおりその風景を揺らめかすのは、家路を急ぐ水鳥の滑る跡だった。

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