2016年05月01日

野分のまたの日〜雨あとのぬかるみも趣ある道〜

sine,cosine,tangentの三角比を三角函数に拡張してゆく過程において、加法定理が重要な役割を果たすことは周知のとおりであります。
sin(x+y)=sin(x)cos(y)+cos(x)sin(y)
cos(x+y)=cos(x)cos(y)-sin(x)sin(y)
この式はおそらく高校数学で紹介される定理であるので、読者諸兄の多くには馴染み深い式ではないでしょうか。
ただ、しかしなぜ、角変数がxとyの二つだけなのでしょう。数学は自由です。変数は三つでも好いんじゃないでしょうか。

例えば、問題集には次のような計算問題が載っています。
sin(x+π/3+π/4)=?
これを見たとき、多くの人は"π/3+π/4"の部分を"ひとかたまり"=yとみて、先の加法定理を使い、さらにもう一度"π/3+π/4"の三角函数に対して加法定理を、というように加法定理の二回使いを考えます。
sin(x+π/3+π/4)
=sin(x)cos(π/3+π/4)+cos(x)sin(π/3+π/4)
=sin(x){cos(π/3)cos(π/4)-sin(π/3)sin(π/4)}
+cos(x){sin(π/3)cos(π/4)+cos(π/3)sin(π/4)}
=(√2-√6)/2×sin(x)+(√2+√6)/2×cos(x) ∎

具体的な問題を解決するためには加法定理の二度使いといった"煩雑"な作業をするのに、どうして変数が三つの場合の加法定理を考えてみることはしないのでしょうか?
今の計算のように、一般の場合もその計算過程あるいは結果は"まとまりの無い"ものになると、予想してしまうからなのでしょうか。
ところが、数学のいくら"綺麗な"定理であっても、その証明には何段階もの枝葉の必要な"煩雑"な操作が必要なことは往々にしてあることです(例えば、代数学や微積分学の基本定理など。)。

だから、式変形の道のりは"野分のまたの日"の泥濘に見えても、その道の先は昼過ぎには明るく晴れ上がることもあるのです。
実用性は?と問われてもそれはお門違いです。加法定理の変りダネ、これは雨あとの午後の小さな山歩きなのですから。∎

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タグ:三角函数
posted by Y.Toriyama at 15:03| Comment(1) | TrackBack(0) | 数学
この記事へのコメント
定理の一般化は確かに興味深い問題ですよね♪
しかし、三角函数の場合は、特定の問題を解く時以外は、このような式変形は日頃避けてしまいがちですよね〜。
でも、実際じっくり計算してみると比較的綺麗な交替式の形で書けるとは驚きですね。
何か図形的な意味を考えてみても面白いかもしれません。
Posted by O.Kitayama at 2016年05月01日 15:20
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