2016年05月15日

広い海、一粒の真珠〜sin(π/12)の数値評価〜

数学史を紐解いてみると、無理数の発見は哲学者たちに強い衝撃を与えただけでなく、数学者たちに実用を離れた純粋な数学的興味を湧き起こさせた史上最大の大事件の一つであったとも考えられます。

遠い昔の話です。
平方根√が初めて私の前に現れたのは中学校の頃だったようです。
今思えば、平方根√の登場は、私の数学観、世界観を変える大事件だったのです。
平方根を乗り越えて、無理数を受け入れて、更にはそれを指数定理の特別な場合だと認識し、そして負数底の指数函数の後ろ髪を捕まえてより一般的な数である複素数までを数として認めるようになった今から見れば、単なる演算の一つですが、数といえば正整数、それを元にした分数、ややあって負数の概念しか手にしていない普通の中学生の私には、
√2=1.4142…
√3=1.7320…
といった、これまでの四則演算では表現し得ない数が存在する、という事実は受け入れがたいものであったはずです。
私が要領がよく、計算法則や開平法のやり方をただ単に覚えて問題集に楽しく取り組めるような普通な生徒であれば、その後の数学の道を諦めることはなかったのでしょうが、私は落ちこぼれでした。
私は私で、二乗したら2になる数を必死で探し、そのうちに黒板は何度も消され、窓から見える桜は散って、葉桜が綺麗な季節になってゆきました。

ところで、今少し述べたように、中学校時代には平方根を次のように習っただろうと思います。
√a=b ⇔ a=b^2, b>0
正の数bを二乗した数がaであり、aは正の数bを二乗した数である
実はこの単純な仕組みを用いると、いかなる数の平方根でも近い有理数で近似(数値評価)出来ることが分かります。
詳しくは講義ノートを御覧ください。有理数では表せないsin(π/12)の値を題材に、平方根の数値評価の一例を挙げています。


平方根をじっと見つめて、その新しい数の存在を疑って先に進めなかった私の努力は虚しく散りました。
無理数を限りなく正しく表現する有理数を見つけるのは、太平洋に投げた一粒の涙を海の底から掬い上げるようなことだからです。
しかし、そんな私の姿勢が大切なのだと気づかせてくれたのは、もう少し後になってからのある出会いでした。その話は又の日に。∎


講義ノート・略証のダウンロード
posted by Y.Toriyama at 14:01| Comment(0) | 数学
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。