
首を上げた竜のようにレールを褶曲させた車輌止がホームのはずれに待ち構えている。ここは都会からの列車の終着駅、鄙びた田舎の無人駅と誰もがいう。辺りには雨降りの翌日らしく朝靄が立ち込めている、ただ、それを気付かせるよりさきに夜明け前の薄暗さが遠く伸びてゆく線路を深く覆っている。
遠くで踏切が鳴り出した。ヘッドライトが靄をかきわけるようにして、回送列車が踏切を渡るのを見た。私はこれから始発列車、都会を目指して最後の旅をする。
ひとはここを終着駅という。ただ、私にとっては始発駅、そして二度と戻ることのない始発駅。
発車の時刻が近づいた。朝の張りつめた空気をつらぬく気動車のスチーム、車掌の声。旅立ちはずっと一人だと思っていた。ただ、出発の笛の音に急かされて駆け込んできたのはよく見知った懐かしい友輩ではなかったか。
まだ、夜は明けきらぬうち、列車は線路わきの0キロ標を大きく蹴りだした。一度は夢破れ、いつしか乗り過ごしてしまった私、そして私たち。だけど、もう一度、行こうじゃないか、共に。
あともう少しだけ薄暗いほうがいい、夜明けとともに登場するほうがドラマとしては美しい。
2017年1月4日 YUUKI Toriyama
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