2019年04月01日

久々の高気圧

真っ青な空

ウイスキーが美味しいから今日は普段より調子がいい。センチな曲を聴きながら琥珀の小瓶を弄っていたら旅にでも出たい気分になった。外は久々の高気圧、電車に揺られて春のみずうみでもみに行きたいなと考えた。冬のうちについた籠りぐせはこれまでどうしても捨て去ることができなかったが、湖西線の春の景色と琥珀の瓶の魅惑の前ではすっかり軽くなっていた。心はあいも変わらず重いままなのだが、高気圧に吹き上げられた桜の花びらのように今日という日は何故か身体が軽く感じるのであった。


駅までのみちのりは春の匂いがした。菜の花畑のまぶしい黄色が単色だった冬の私の眼底を一気に春に変えた。そのとき黄色のさざ波が大きく揺れた。久々の高気圧で帽子が飛ばされそうになった。風で翻る帽子を抑え、青空を見上げると春風はほんのり蜜の味がした。


久しぶりに見た太陽は眩しすぎるから、外套にそよ風を通すとひやりとして気持ちがいい。いつまででも夢の中で立っていたい気持ちである。


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2018年05月19日

"伊豆の踊子"

東海道線から伊豆・熱海・修善寺へとゆく特急「踊り子」は、いわずもがな文豪・川端康成の処女作「伊豆の踊子」をふまえた列車である。ながいあいだ「踊り子」の185系がつけて走ってきたヘッドマークを私はひいきにしている。

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絵のなかの、蒼い海の向こうに入道雲が立っているのだから季節は夏で、これはたしかに「伊豆の踊子」の一場面である。前髪をぱつんと切ったまだあどけない顔の少女が水平線のかなたを見つめている。彼女が川端のいう〈踊子〉で、〈私〉はこの娘をつれた旅芸者の一行とこの何日かの半島の旅を共にしてきたのである。その旅の中で一高生の〈私〉は〈踊子〉の純粋なむすめらしさにこころ惹かれる。そして最後には下田の港まで道連れてやってくるのだが、ここで〈私〉はどうしても東京に帰らなくてはならない。

海を見つめる小さな乙女の細く白い右手が、港を発って次第に遠くなってゆく汽笛にこたえて、さよならと言っている。

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折に触れてまた「踊り子」に乗る機会があって、湯河原あたりから見え始めるきらきらとした青い海に、伊豆の半島の夏蜜柑の甘酸っぱさを重ね合わせてみたのである。旅の宿で行李をひろげて、また何度目か「伊豆の踊子」を読み返すのである。

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2018年03月22日

"タイムズスクエア・たったひとつぶん"

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渋谷、原宿と山手線外回りが代々木を出ると、いつのまにやら新宿である。摩天楼じみた時計塔、ビルの谷間に都庁のタワーがちらりと見えた。小田急線が西側から合流すれば、甲州街道の下を電車はくぐる。ちかごろ、新宿駅はどんどん南へ大きくなって、この二駅のあいだは、タイムズスクエアたったのひとつぶん。東京一短い、山手線ひと駅ぶんの旅。がたんごとんと15番ホームに列車は着いた。

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2018年03月14日

"京都の花園"

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「花園」はたしか関西だった、ということだけを覚えて京都にやってくると、少しのんきな感じもする嵯峨野線の花園駅に降りてみて拍子抜けをする。少し歩いてこの辺りに大きなグラウンドでも、と探してみたくなるけれども、この洛外の駅の周りにかのラグビーの聖地はない。かわりに目につくのは二階建ての駅のホームから見える双ヶ岡で、遠き平安の時代、清原夏野という朝廷びとがこの山のふもとに屋敷を持っていた。夏野の邸宅がいろとりどりの花に飾られていたことから、この辺りは花園と呼ばれるようになったのである。

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2018年03月06日

"白梅町と紅梅町"

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天満宮の梅苑がじき見頃であるけれど、嵐電北野線が西大路通にぶつかるあたりに「北野白梅町」と「北野紅梅町」というふたつの町がある。京都の町区分はかなり細かくて、地図をみればどちらも小さな町だけれど、赤と白、紅白のいろちがいでふたつの町が隣り合うのはおもしろい。

右京があれば左京がある、下京をのぼったところに上京がある。そんな京都の街の縮図を京福電車の駅のあたりにみているようでおもしろい。

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2018年02月05日

"寒中御見舞、申し上げます"

枕草子風に、いとほしきもの、と始めるならば、私の場合、苔むした巌、その上に積もりていまだ解けずに残りたる白き雪、とつづく。

苔というのは他の木々や草花とちがって、陽の照るようなまぶしいところでは育たない。

山地でもなく、きまぐれに降る雪ならば、案外まぶしい真冬の太陽に昼過ぎには解けてしまう。

それでも昨晩、いや、おとといからの粉雪がそのままに降り積もっているのは、物静かな林の影の、抹茶色に苔むした小石のうえにふんわり積もった雪である。

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