2017年11月11日

古いノート・ブックより

 東西に走るながい長い列車に乗り、沼津そして東京を目指している。浜松を出たあたりからの単調な景色に輪をかけるように、富士山の見える手前で日が暮れて、てもちぶさたにうつらうつらとまどろみかけていた。夕闇がさきか、雨雲がさきか、列車は東に向かうにつれて、窓のガラスを斜めのしずくが伝うようになっていた。

 ふと目覚めたところが近くに学校のある駅らしく、ホームに電車が入るなり、にぎやかな声の様々が流れとなって電車を包みこんだ。ドアが開けば色とりどりの傘を閉じたセーラー服の学生たちで、再び列車が走り出すと、杖代わりに床についた雨傘の穂先から細い川がいくつも流れて、外の雨降りを思わせた。

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2017年11月05日

陽暮れかかる、旅のみそら

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 堰きとめられた静かな水面が、鏡のように向こう岸の紅葉を映している。背の高い山に囲まれた盆地にありがちで、ここの山里の夕暮れも早い。ちょうど私はなだらかな河の南岸に立っていることになるのであって、私の来た道はもう薄暗かった。だから、土手に伸びる道の向こうにまだあかあかと照らされた樹々の赤色を見たときには、寒さではなくその明るさに心震えた。

 河北のあたりはおそらく田んぼのような低い土地が続いていて、どこかで急に背高い山につながっている。色を変えない木も多いらしく、夕暮れて来るまではその山肌の美しさに気がつかなかったのであるが、沈みかけの陽に誇張されてだろうか、いちめん真っ赤に染めた秋の山がそのまま眼に映るのも美しく、さらに静かな川面に映りこんだ。ときおりその風景を揺らめかすのは、家路を急ぐ水鳥の滑る跡だった。

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2017年10月23日

静かな朝を東京で

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 朝の中央線快速、山手線のうちがわを走っているのに、東京から新宿へ向かう電車はめずらしくうんとすいている。これを見つけてからは、わざわざ東京へ回るのを遠回りと思わず、長い座席にのんびりと座って外濠のしずかな景色を眺めたりするのが毎朝のきまりとなった。

 私は、東京から見ればずっと南の鎌倉辺りからながいこと新宿に通っているから、最近では便利になった湘南新宿ラインをつかえばひと足でパッと、いや、ひと眠りで乗り換えなくゆけるのだけれども、うちを早く出て、横須賀線で東京へ回って、地下ホームからの階段を上ったところにあるカフェでちょっと軽めな朝ごはんをいただいて、それから腕の時計を見てもまだ出社までは一時間。テーブルを片付けてもらって、コーヒーを楽しみながら、ちびちびと小説を読み進めたりする。そしてそれから、エスカレーターを上がってオレンジ色の電車でゆったり座って通うのが、なんだか心地よくて、早起きは苦手で何事も三日坊主で済ませてきた私でもできるちょうどいい習慣となって、たまに寝坊をして鎌倉駅行きのバスに一本乗り遅れて新宿に直行しなければいけなくなった朝などには、大人としては分かっていても、どこか子供っぽい自分がまだぼんやりと目をこすっているような気さえするようになった。

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 仕事の帰りなんかに八重洲口のほうに用があって、新宿から一駅の代々木駅あたりから各駅停車に乗ったことがあったが、この黄色い電車は御茶ノ水でオレンジ色の東京行きに乗り換えるまでのあいだ、何回もわきを走る快速電車に追い抜かれたりした。中央線はオレンジ色の快速と黄の各駅停車が別々の線路を走るようにつくられている。いつもは各駅停車をどんどん追い抜いてゆくのだけれども、逆に抜かれる立場になってみると、新宿・東京間は結構長い時間乗っているように感じたのを覚えている。

 だから、距離でいえば結構な遠回りになるのだろうけど、御茶ノ水のほかには四谷にしか止まらない快速を使うから、時間でいえば10分か15分くらいのほどよい寄りみちになっているようである。

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 まいあさ毎朝、東京のまわりから都心へ向かう電車はJR、私鉄を問わず、息をするのもつらいほどの混雑で、窓の外の景色などに気を向ける余裕などなかなか生まれてこないのだが、こうして早起き・健康づくりを兼ねて、小さな遠回りを日々かさねることで、外濠のみずに映る空のいろの微妙な変化だったり、言葉にするのは難しいことだけれども、いつのまにか季節の変わり目に敏感な自分を発見したりと、この歳ながら、自分の中に変化が生まれていることにおどろいたりしている。

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